• 文芸出版半世紀

一期一湯 都内湯屋巡り「松の湯」(品川区・西五反田)

 五反田で知人と囲碁を打った後、高速2号目黒線を越え数分で松の湯についた。時間があったので小学校の校庭で遊ぶ児童を眺める。大きな声で走り回る小学生、かつてはそんな日が私にもあったのか。脱衣所は広く清潔、立ちシャワーは2つ、湯屋内の鏡は円形、女湯との境、壁のタイル画はひっそりと野に咲く桔梗風で妙になごむ。定番のケロリン桶も悪くはないが、木桶の使いこんだぬくもりはまた別の趣、床に置くと広い湯殿の空間に残響がこもる。男湯は赤富士、女湯は白富士、女将に伺ったところ毎年、塗り改めているという。湯船につかって高い天井の木目を見ていると、なんと正面に先ほどの校庭の樹木が空とともに望める。
定刻に開き、午後の陽ざしにきらめく湯のぬくもりもう一人の方と、たった二人の湯屋三昧は至福のひととき。ちなみに柳田君の「日本地名考」に拠れば、田地を五反で一区切りにしたので五反田ということだ。品川区の西側に東急の目黒・池上・大井町線が通り、銭湯はこの区画で二十数軒。今回そのうちの一軒にたどり着いた。 (2014・睦月)