• 文芸出版七十年

一期一湯 都内湯屋巡り「塩湯」(新宿区・三栄町)

 傘立ては上下二段で用いる昔のタイプも。湯船の上、雪渓をまとった山々はスイスかオーストリアか。黄色の桶はケロリンの四文字ではなく塩湯の表記。湯上り、木製の長椅子の座り心地がよい。ここには上智の他にどこの学生さんが来るのだろうか、前回来た時はスポーツ後に汗を流しに来た部活後の団体に遭遇し、若さむんむんの、にぎやかな銭湯だった。
ところで鴎外が立案し春陽堂・発行の「東京方眼図」(復刻版)なるものを私は部屋に貼ってあるのだが、明治四十二年にはあった塩町・坂町は本塩町・坂町として残り、箪笥町・伊賀町.傳間町は統合され歴史の彼方に消えてしまった。   (2013・師走)