地下鉄・新中野から公園を横目に南へ数分、旭湯についた。トイレは木戸風、タイル絵は西伊豆からの一幅の空と海、富士山は質素で品がいい。男女を仕切る柱には花と美容、両方を営む「イトウ」の広告板が掛っている。土曜の夕方、差し込む夕陽が湯船で揺れ、ガラス戸に映える。空色・水色に塗り分けられた高い天井が心地よい。
風呂上りに豊かなきもちになり、向かいにある自転車屋さんをみて、外に出ればもう夕刻、狭い杉山公園を横眼で見ると若夫婦に赤ちゃん、遊具で歓声をあげる幼児、煙草の灰をベンチから散らかし楽しそうな会話が弾む老人たち、そんな狭い空間にそれぞれの時が流れている。これが人生か、と妙に達観しながら帰路につく。 (2014・皐月)